オフィスのロゴについて:窓からの景色を眺めるように

 

 オフィスのロゴは昨年(2019)の5月に完成し、その際に「ロゴの由来についてはまた説明します」と書いたのですがそのままになっていました。こういうことについて自ら説明するというのは少し気恥ずかしいものがありますが、せっかくなのでどういった理由でこのようなロゴにしたのかについて書いてみたいと思います(ロゴ自体はプロの方に作っていただきました)。

 

 メインとなっているモチーフは窓です。窓にしたのは、精神分析の祖であるフロイトが治療を始めるときに患者さんに説明する言葉から取りました。それは「治療の開始について」という論文にのっており、次のようなものです。

 

ですから、頭に浮かんだことは何でもお話しください。たとえば、あなたが列車の窓際に座る旅行者だとして、車両の内部の人に窓から見える移り変わる景色を描写して聞かせるようにしてみてください。*1

 

 全体の説明はもっと長いのですが、この列車の窓の例えはフロイトをよく知る人の間では有名なものです。

 

 実際にこのように頭に思い浮かんだことを「何でも」話すというのは難しいものだったりします。人の頭には様々なことが思い浮かんでは消えていくものですし、それらを全て言うとなると躊躇してしまうものです。例えば「あのことも気になるけど話すことでもないかな」「急に思い出したことがあるけどくだらないからやめておこう」「さっき言われたことが引っかかるけど聞きづらいな」など、自身の中で話すに値するかどうかをジャッジしたり、相手の反応を気にしたりして、思い浮かんでも話さないままにする事柄というのはとてもたくさんあるでしょう。

 

 フロイトも、上に引用した箇所の前段階の部分でこのように言っています。

 

お気づきになると思いますが、話をしているうちに批判や反論の気持ちによって脇に押しやってしまいたくなるようないろいろな考えが浮かんできます。すると、こんなことやあんなことはここで話すにはふさわしくないとか、取るに足りないとか、ナンセンスだとかいうことで、ここで話す必要などはない、とこころのなかで言いたくなるかもしれません。しかしながら、こうした批判に屈してはいけません。その批判にもかかわらず、それを言わなければなりません。むしろ、言うことに嫌気を感じるからこそ、あなたはそれを言わなければならないのです。

 

 やや迫るような圧のある物言いではありますが、フロイトは一見些細と思われることや言いづらいことでも、その時その場で思い浮かんだということに何らかの意味があると考え、すべて重要なものとして扱いました。その理由は精神分析の理論的な部分と関係してくるためここでは割愛しますが、フロイトのこの、患者さんから出てくる話に優劣をつけず、それら全てを意味あるものとして扱い1つ1つについて真剣に考えるという姿勢自体はカウンセリングにおいて大切なものではないかと感じます。

 

 こういった経緯から「窓」というものをモチーフとして選びました。来談された方の心の窓からの景色を共に眺めて考えていければ、という思いも込めています。ロゴの他の部分(葉っぱのモチーフや影絵のようなデザインであること)についても理由があるのですが、それらはまた別の機会にしたいと思います。

 

 

*1:『フロイト技法論集』(岩崎学術出版社)より引用

2020年05月18日